薄物 薄紫唐花紋直衣
うすものの うすむらさきからはなもんの のうし


薄物の薄紫唐花紋の直衣

着た状態に近い様子で畳んであります



今回、直衣(のうし)製作は2回目です。
今回のポイントは「薄物(うすもの)」で作ったということです

一般には、「夏物」として使われている「紗(しゃ)」という織物で作りました。
絵巻物に登場する直衣には、中が透けている、いわゆる「シースルー」の直衣が
とても多く、中の下着などが透けて見えて、とても色っぽいです。」

←今回は、唐花という紋の織り込まれた紗という、荒く織った
織物を使いました。

この「薄物」の直衣が欲しかったんです!!
しかも、いわゆる、近代有職で直衣用と決められている
二藍色ではなく(濃い藍色もすごく好きなのですが)、
薄紫にしました♪

わたしは、結構のんびり縫います。
気が向かないと、数ヶ月間放置ということも・・・
そのため、パーツ毎に巻物にして手をつけていきます
←袖(そで)が縫いあがったところです。

この時点で、いつも「どんな装束に仕上がるかな」と
想像するのが楽しみです。

今回は、身頃は紋を合わせましたが、袖は縫い目に紋が
つながるようにはしていません。
薄っすらと下が透けているのがいいですよね★

前のオクミという部分を縫い付ける準備をしています。

さすがに、前から見たときに紋があっていると見栄えがとてもよくなるので、身頃(みごろ)は紋様が縫い目で切れてしまわないように合わせてぬってあります。

個人的には、現代で「直衣」といわれているものと平安の直衣では、いくつかの違いについて気になる点があるので、今回はその部分を実験的に現存遺品と照らし合わせながら縫っています。
←「衽(おくみ)」付けが完了!
画像では見えにくいかもしれませんが、中央の紋様を合わせてます♪

実は、ほとんどの装束関連の解説本や研究書で言及されていないのですが、正式な上着の「うへのきぬ」と「直衣」の違いが、ちゃんと形の違いの上でも絵巻には描かれているのに、そのことを指摘している人はほとんど皆無です。

わたしは、そういうところにこそ、当時の人が感じていた「違い」を感じ取ることができるのだと思います。

自分で縫ってみたり、作ってみたりするととてもよくそう思います。

「襴(らん)」と呼ばれる裾(すそ)部分を付けています。

直衣の後ろに「はこえ」を作るところです。
古い絵巻などにはこの大きさが様々であったことがわかります。
つまり、着た人の丈に直してあるのです。
今の和服で言うところの「おはしょり」です♪

まだ袖がついていませんが、
だいぶ出来上がってきました☆
←衿部分です。
平安時代は若干ちがったと思いますが、現代装束使用です。







↓衿の後ろの高くなっている作りが古い絵巻と同様になるような
仕立てにしました♪


完成です!!!


前述の通り、今回の直衣は背中の「おはしょり」部分である
「はこえ」をとても大きくとってあります。

古い絵巻には、この「はこえ」が、襴にまでかかっている
ものが多く見られます。

たかが、それだけのことですが、そういう細かな部分を
平安使用にするだけで、とても絵巻などに近いシルエットに
なります☆



着装!


冠を被ってみました♪
何気に、畳が繧繝なのがポイントです☆


いわゆる冠直衣と呼ばれるスタイルです。
うまく直衣の透け具合が撮影できませんでした・・・。
ただ、フワッとした柔らかいシルエットはでていると思います♪


今回は、完成した薄物直衣を、ある展覧会に出品しました。
たっぷりと香を焚き染めて、おきました。
そして、触っていただけるように展示してもらいました♪

       

とても好評をいただき、お便りなどもいただきました。本当にありがとうございます。

ちょっとした感想を書いておきたいと思いました。


今回の製作にあたって、薄物のこの生地を探した際に、
ある東京の装束屋さんが

「日本には美しいものが沢山ありますよね。こういう日本の美しいものをもっと若い方や多くの方に知っていただきたいです。
そのためには、何なりとどうぞ。」と生地選びや、生地を販売していただくことなどにも心良くご協力をいただきました。

ごく一部ではありますが、装束屋さんのごく一部には「これは特殊なものでお譲りできません」とか
「装束が売れなくなってしまうので・・・」などと言って生地すらお分けいただけないことがありますが、

「閉鎖的になった文化」は必ず失われていきます。
広く愛されるものだけが残っていきます。
これは、私の主観ではなく、歴史の事実としてそうなっていると言えます。

たとえ、上質な絹でなく、化学繊維であったとしても、そこに織り込まれた美しい日本人の共有財産である紋様や柄が折りこまれた
有職裂地が、容易にそれを愛する人々の手に渡り、それらがひろく皆に愛され続けることが、
「身分制度の遺品」としてではなく、「今に生きる美しい日本文化」として後世にのこる唯一の術だとおもわれてなりません。

是非、今後、よりいっそう、こうした日本の美しい紋様の織り込まれた生地が広く一般に普及されることを祈念しております。

いつもご協力いただける、日本文化を本当に大切に思われている関係者の皆様には心より御礼申し上げます。






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