紫檀横笛
(したんのおうてき)


銘 樽裏
       (そんり)

笛吹の君様 作



このたび、素晴らしい贈り物をいただきました。
あまりにスペシャルな贈り物でしたので、こちらに
ページを設けてご紹介させていただきます。

なんと!!雅楽の演奏に使われる龍笛と呼ばれる横笛です。

龍笛と言えば普通素材は「竹」です。
ところが、笛怜の君様は私にこうお尋ねくださいました。

「院には何にて造らむ御笛を好ませたまはむ」

感激です!平安です!

もし「龍笛」という笛の定義自体に「竹製」という
意味を含んでいれば、厳密な意味においては「龍笛」では
無いのかもしれませんが、正倉院の「象牙の横笛」遺品を
見てもわかるように楽器は、素材によって呼び名が変わる
ものではないことは明らかです。

そもそも平安の記述に龍笛という単語を見たことがありません
横笛は横笛だったのでしょう

というわけで、私のこよなく好きな「紫檀」で
作ってくださった特別な横笛をご紹介させていただきます



加工の紹介は、私が勝手につけて間違えてしまうと大変なので
「笛吹の君様よりいただいたコメント」をそのまま使用させていただきます。
←紫檀の角材と、切削後の状態です。
全体を2ピースで加工しています。
歌口・頭・胴部分の加工中。→
こちらは指孔から尾にかけての部分です。段差をつけて切削しました。籐を巻いて仕上げると、テーパーがかかって見えます。
少し細めに削り直しました。といっても、私の管はかなり太めです。龍笛は厚みがある方が良い音が出ると思われます。(篳篥は薄目だそうです。)→

仮に組んでみました。内径はステップで開けてあります。ここからは手仕上げで音を合わせながら、徐々に仕上げていきます。
ここまで、仕上がったところで、笛吹の君様より

に管尾の辺りの杢が綺麗です。まだ荒仕上げなので、写真ではわかりにくいかと思いますが、300番のサンドペーパーで磨き、油分を与えてみたところ、本紫檀らしい渋い色合いが出ています。乞うご期待!」というメールをいただき、お写真まで添えてくださっていたので、私のテンションも一気に上昇してしまいました♪

写真からでも十二分に紫檀の美しい風合いがわかります♪

 
墨付けしたところに、鼠錐で下穴をあけます。勢い余って反対側に傷を付けないようにしつつ・・・
 
 
歌口の下穴を広げます。刳り刀でゆっくりと。やや小さめにしてあります。この後、音程をみながら広げていきます。




指孔の墨付けと下穴開け。
こちらもまだ小さめにしてあります。

仮組。
胴の部分には、膠で和紙をはり、形を整えました。和紙は籐の下地になります。

ン・口・テ・五のあたりの谷刳りをしました。

蝉を彫りました。

内径の調整(棒ヤスリで段差をとり、棒に紙ヤスリを巻いた物で仕上げます。)もできたので、ほぞに和紙を巻き、膠で接着します。


内径の調整(棒ヤスリで段差をとり、棒に紙ヤスリを巻いた物で仕上げます。)もできたので、ほぞに和紙を巻き、膠で接着します。


全体の谷刳り完了。この後、徐々に番手を上げながら、紙ヤスリでなめらかに仕上げていきます。

例の木目です。それほどでもないかな?籐を巻くのでほとんど見えなくなりますが、赤味の部分がワンポイントになるかも・・・


歌口に蜜蝋を入れ、鏝で溶かしました。

次に、ここまででメールをいただいたのですが、
御覧の皆様にもお分かりいただけますように、この細やかで丁寧な作業をお写真付でメールしてくださり、大変勉強になりました。
そして、何より「見たい・吹きたい・触りたい」といういつもの欲求が日増しになるのを感じながら、
メールのやり取りをさせていただいておりました♪





籐を巻く部分の下地に、和紙を膠で接着します。



籐を巻きます。


籐が少し太いので、細めに削ります。

指孔と籐の段差を削っているところです。このあとサンドペーパーで滑ら
     かに。

籐を巻き終えました。

龍笛の方はかなり仕上がって参りました。
音程もほぼ整い、籐の仕上げと内径の仕上
げを残してほぼ完成です。

この膨大で、細やかな作業・・・しかも木工はとにかく地道で気の遠くなるような繰り返しの作業が何度もあります・・・をひとつひとつ丁寧に、しかもお写真まで撮影されながら進めてこられた笛吹の君様、本当に尊敬いたします。
完成

笛吹の君様は

「龍笛ですが、一応できたのですが、内径の塗りの仕上げがうまくいかず、失礼とは思いながら時間をいただいております。

5日前に再度削りなおし、乾燥を待っております。
すでに12回目の塗りなのですが、満足のいく仕上がりがえられず、歯がゆい思いをいたしております。
完全に乾いてから塗装します。実は3回くらい前から、「これで仕上げ。」というつもりでいたのですが、少しほこりが入ってしまっていたり、むらがあったりで、「もう少し、」と思ってやり直すうち、今に至っております。」

っと仰っておいでですが、
全くもって素晴らしい作品です!
本当に美しいです!

はっきり言って感激しました。



笛吹の君様は、頻繁にメールで進捗状況を写真付でお知らせくださり、そして何より、その都度
「私の好み」にお気を使ってくださり「どちらがお好みですか」と、お聞きくださったのです。

「○○とはこういうものです」という決め付けをなさらずに、「もの造り」の立場から
色々なアイデアを創造されるところはまさに「文化」だと感激致しました。

伝統的な形状や造りをあくまで大切にされながら、楽器としての機能や装飾、風合いを
創造されるところは、まさに「平安」の貴族文化だと感服いたしました。

私も、かなりモチベーションがあがりましたので、ますます平安の実践に取り組んでまいりたいと
存じます。

・・・それにしても、このように見事な作品をお作りの笛吹の君様、本当に素晴らしい贈り物と、
様々なお心遣いを本当にありがとうございます。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。




実は、さらに素晴らしいサプライズがありました。

笛吹の君様は龍笛のみでなく、なんと「供箱」まで
制作してくださった上に、裏書までお書きくださいました。

本当に素晴らしいのでご紹介させていただきます。

蓋はスライド式になっていて、使い安くとてもスムーズに出し入れができます♪

さらに、蓋には紫檀で琵琶の覆手をあしらった装飾がついており、それがそのままスライドさせるときの取っ手になるために装飾性と実用性を兼ねています。
このような素晴らしい横笛(龍笛)をお贈りいただいたからには、早速吹いてみたいと思うのが人情です。
「樽裏」の銘にふさわしい月夜に♪

花の咲き満つる
望の夜に
院には少将殿、
相模守殿と衛門佐殿と
女君などさぶらはせて
しのびて渡らせたまひたり

ということで、花の盛りの月の夜に
「樽裏の笛」を吹きつつ出かけてみました。



月の光モードで撮影してみましたが、
すこしピンぼけになってしましました・・・。
満開の桜が月の光に映し出されていて
本当に幻想的で美しかったです。
周りにひとけもなく、ただただ静寂の中に
ありました。
その中にただ笛の音のみ・・・。という感じです☆

「笛吹の君」様、本当に素晴らしい贈り物をありがとうございます。
手に収まった感じもとてもよく、風合い、吹き心地もいいです!
まさに名品と呼べる作品だと思います。

手間を惜しまず、素晴らしい作品をお作りになられたことを本当にご尊敬申し上げます。

また、このような素晴らしい作品をご紹介させていただけますことを本当に嬉しく存じます。
「笛吹の君」様にはこの場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。

この素晴らしい「樽裏の御笛」はこれからの平安実践に必須アイテムとなります!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。





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