院別当の君日記

平成十八年


葉月・長月


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葉月二日

右近中将、遠江駿河あたりに
くだりて物見遊山などし給ふことあれば
院にも車に奉りて忍びておはします
少将、衛門督さぶらひつ



葉月四日

刑部卿より消息あり
明日、明後日のほどにも
いかで見えむとて
攝津にくだりてありしより
のぼりてこそなど

いみじういとほしがらせ給へども
事につけつつせさせたまはでは
なるまじきことどもあれば
え見えでこそ



葉月六日

つとめてより
忍びて厚見命婦が里へは
御渡りておはしましつ
火の花々こそいとめでたけれ

夜も更けぬるほどに
義将衛門佐、ものつきたるとて
悩みたるよし聞こし召せば
おほせて大蔵大丞、院宣旨
衛門督、加持などしたるに
御自ら加持せさせ給ふこそ
いとかたじけなけれ

右近中将が御祝事あれば
衛門督宿直してめであへり



葉月七日

大納言殿、ひねりがことなど
申し給ひけるなかに
いとまもあらでものしたるなど
のたまひたり



葉月八日

管弦の御遊びに御手づから
弾かせ給ふよしのたまひにたれば
うるふ衛門督、義将衛門佐をば
召して試みせさせ給ひつ



葉月十一日

義将衛門佐より
さまざま聞こし召したり

厚見命婦より消息あり
三鷹内侍などつつがなしとこそ



葉月十三日

この頃前兵衛督より文しげきことなど
なにによりてかなど
あやしうおぼゆるに
けふはた文あり
ことことしきことさらになし



葉月十六日

衛門督、衛門佐さぶらひて
管弦が試みをば
せさせ給ふ



葉月二十一日

義将衛門佐、宿直(とのゐ)にさぶらひつ



葉月二十五日

相模にて管弦の御遊びいと
殊にすとて
衛門督が御車に奉りて
まかでさせ給ひたり
みをつくしの弾正が車に
衛門佐あひ乗りて
君達あまたさぶらひたり
いとめでたう
調べあはせて人々
もの言ひ笑ひなどしつ
いとをかしかりぬ



葉月二十六日

異所に管弦の遊びすと
聞こし召して、忍びて御覧じに
まかでさせ給ひたり

若き人のをかしう
弾きたるもまたをかし



長月一日

右近中将が御車に奉りて
忍びて御渡りあり



長月三日

少将、衛門督、とのゐしてよもすがらさぶらひにたり









長月五日

院にさぶらひたる人あまた
君達など参籠すとて
つとめていでたりけり




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