年中行事絵巻の彩色

平安時代末期の絵画として私が最も好きな絵巻のひとつ
「年中行事絵巻」を彩色してみました。
最近は、貴重文書や絵巻がインターネット上で見られるようになってきました。
このことは、平安の文化があちこちで研究される非常によい環境だと思います。

いろいろな大人の事情で、一般には目にすることのできなかった貴重な資料が次々と
公開されていっています。平安時代の研究が進むことを願ってやまない私としては
この流れは大歓迎です!
関係者の方々の努力に心より敬意と感謝を申し上げたいと思います。



私が平安時代の文化を研究するのに第一級の資料としているのが「絵巻物」です。

絵巻物には実に様々なものが、実に正確に、詳細に、丁寧に描かれています。
残念ながら原本は失われては白描の下書きのようなものしか残っていないもの
もあるのですが、彩色してみると、実に美しい構図がよみがえってきます。

私の場合は、あくまで服飾のシルエットや着方、部屋の間取り、調度の様子や配置などを
視覚で観てみたいという気持ちが強いので、その観点からの彩色となっています。
多少の主観や好みで創造を加えている部分もありますのでご容赦ください。


年中行事絵巻
「叙位」部分です。

私が知る限り、現段階では、白描(はくびょう)の白黒写本しか残っていないため、手始めにこの画面をカラーにしてみました。

平安時代の「清涼殿」にとても興味があり、
どうしてもいろいろな構図を見てみたいと思ったのです。

左手下座の貴族は恐らく、黒のうえのきぬではなく、赤だと思いますが、練習のため黒一色にしてしまいました・・・。ご容赦ください。



続いて、私が最もカラーで見てみたかった部分
「忌火御飯」部分です。
現存するモノクロ状態は右のような状態です。」

個人的な感想ですが、人の住んでいない建物は
どうしても儀式ばった部屋の様子になって、生活感がなく、妙な違和感を感じます。

どうしても、生活感のある清涼殿の様子を見たくて、そのような絵巻を探していました。

この忌火御飯も厳粛な儀式ではあるのですが、平安のリアルな清涼殿の様子がとてもよくわかるので、私が最も好きな場面のひとつです。

部屋のあちこちに配置された厨子などは、まさに日々天皇が住まわれていた「リアル」な清涼殿の様子が伝わってきます!

御帳台の横に繧繝の畳を敷き、その横にも蒔絵の厨子が配置されているのは、まさに実用的で、利便性が高く、納得です!

そして、楽器の置かれた蒔絵の棚などもさまざまな古文書の記載に見られるところです。


実は、絵の中の襖絵(御障子の絵)などにも
大和絵(風)のものを描いてみました。
グレーに見えますが、銀を用いて描いてます。
キラキラしててとても綺麗です。

また、装束の紋様もちゃんと描きました。
結構、大変でした・・・。でも、描いた甲斐がありました!

几帳や御帳台の帷子(かたびら)部分の紋様、
天皇の装束や蒔絵など、金銀を使ってできるだけ
これまで研究の結果や様々な調査報告書や論文などから、当時に近いと思われる
色彩で彩色してみました。

平安時代や鎌倉時代の絵画の
最も美しい表現だと私が確信しているのが、
「水の表現」です。
どうか、ご覧くださる皆様も、平安や鎌倉の絵画の「水」の
表現に注目してください。

本当に美しいです。
私は、絵の完全なる「素人」ですが、
「水が流れる様子」をまねて彩色してみました・・・が、
やはり難しかったです。
とても、平安時代や鎌倉時代の繊細で流麗な線は描けません。
彩色した絵巻自体の大きさが少し小さめだったのを差し引いても難しかったです。
いつか描ける様になりたいと思います(笑)




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