挾軾(脇息)





脇息製作


   
『今回は「脇息」
(正倉院等に残されているもの等は「挾軾」となっていますが、
     その機能は現代でいうところの「脇息」に当たりますので、
あえて「脇息」という漢字をあてております。)
     を製作しました。』


             脇息製作にあたって

                             はじめに

   以前に、琵琶を製作した時にも書かせていただきたかったことがあるのですが、
   なにせ琵琶は書きたい事があまりに多すぎて
()いたずらに長話になってしまう
   為に、あえて書かなかったことがありますので、今回の脇息製作にことよせて
   少々私の考えなどを書かせていただこうと思いました。

    おおげさな言い方になってしまって恐縮なのですが、これら調度等を
     
製作する時に一貫した 「こだわり」 があります。


  1.製作過程での歴史学的、考古学的な研究を楽しむ事。

  2.(昔の貴族達がそうであったであろう当然のことなのですが)使う人間(私)
    の寸法に合わせてあり、
「装飾、形状等に「使う人間(私)の趣味や趣向が
      反映されている」
こと。

  3.実際にそれらを使用して、体感することによりさらなる研究を楽しむこと。

   箇条にすれば、このように堅い表現になってしまうのですが、1・2などにおいては、
   要は 「自分で作ってみないと果たせない」ということです。

   特に2は、古典文学にも多くみられるように、例えば「宴」などの機会に調度等の
   装飾等に工夫を凝らし、趣味や趣向をアピールすることは 「重要なポイント」 で
   あったはずです。
   もちろん彼らは自ら自分の手で作ったわけではないでしょうが、現代の我々が
   2 を果たそうとすれば、人を使うなどして莫大な費用等がかかってしまいます。
   さらに、1 をも満たそうとするならば、もはや自ら製作する以外には方法はない
   ように思われます。

   したがって技術の高さをこれ見よがしに知らしめすようなことは、全くもって
   目的ではありません。

   せっかく苦労して製作したのですから、苦労した点などは自慢気に(笑)
   書いてしまいますが、「がんばってやったのだなぁ」と何卒暖かく見てくださいませ。




                      製作

   

     かなり前からり組んでいたのですが、途中で仕事などの忙しさに
   「
中断」しておりましたのでかなり完成が遅れてしまいました…。
   しかし、とりあえず美しくさっさと仕上げてしまえばよいという考えでも
   なかったので、のんびりといつものように「研究や考古に重点を置いて

   製作しました。

   まずは、その形についてですが今回も東大寺の正倉院に残っているものを
   参考にしました。正倉院のそれは脇息の土台にあたる部分の形がとても
   美しい形だったので、とても気に入りましたが形を参考にしたまでです。
   
大きさや装飾、材質等はすべて自分の好みです。

   私は紫檀という木材がお気に入り(笑)なこともあり、今回も一部に紫檀を
   使用しました。そしてその木目やもともとの色を生かしたいなと思いました
   ので、漆も黒の部分とは使い分けました。

   やはり何といっても大変なのは、「木材の加工」でした…。
    今回もかなり硬質な木材を使用した事もあり、その加工には涙を流しながら
  (大げさでスミマセン(笑))の作業となりました。

   琵琶の時もそうでしたが、もちろん今回も「そのままの木材」を使用して
   すべて切り出しました。
(なんと物好きなことでしょう(笑))

   一つ一つの部位を切りだして加工し、さらにそれを丁寧にやすって磨きを
   かけていきます。

   実は、ちょっと面倒くさくて少々手を抜いたところもあります・・・(苦笑)



            木材の加工について

   毎度の事ながら、木材の加工には神経も体力も使います(笑)
   今回の場合、やはり「土台の飾り」の部分と「足」が殊に大変でした。

    土台にも足にもかなり硬質な木材を使用している上、その形状が複雑なので、
    かなり苦労しました。
    足は全部で四本あるのですが、真中が細くなっているアーチ型の四角柱(正面から
    見た場合) にしたため、四本を同じ形にしなければならなかったのです…(泣)

                             →
    さらに、写真を御覧になっていただければ
    お分かりいただけると思いますが、
    土台の形は「なんと表現してよいか
    わからないほど複雑」な形(苦笑)です。
    これらも、すべて自分で加工しました。

    正直申し上げて「ものすご〜〜〜く大変」という
    一言でしか説明できません。


    ただ、苦労したかいもあり仕上がった土台の重厚で優美な形を見るにつけ天平の
    デザイン家の素晴らしい創造力を思わずにはいられませんでした。
     (
土台の部分のデザインを採用しただけで足の形などは正倉院のそれとは異なっております。)
    ちなみに「復元」ではありません。

             
←組み立てた状態です。













   あとは、いくたびも漆をかけては表面を  
   整えという作業をくり返し、完成させました。

   まずは、形が一通りでき、漆が塗り終わった(今後も
   もっとかけますが。)
   時点での状態をアップしようかなと考えて
   おりますが、
もちろんここで完成ではありません(笑)

   なんといっても、ここからが重要です。むしろ
   ここからこそが「使用する人の趣味や趣向が表れる」

   と考えております。
   確かに、これまでで充分に形を好みの形にし色や材質も好みのものに
   した上に自分のサイズに合わせましたが、それだけではまだ私としては
  「イケてない」のです(笑)


   むしろ、ここからどうするかという事が
  「をかし・めでたし」に繋がるのだろうと
   勝手に確信して作業を続けますので
   是非にも、暖かく見守って頂きながらも
   お楽しみにされて下さいますようお願い
   致します〜。

                                ⇒    
             
 とりあえず蒔絵ナシで、実際に
            くつろいで使ってみました。
           当然ですが脇息にもたれるとかなり楽です♪
            一時的完成画像です。
            現在蒔絵のデザインなどを考えています。
                            
 
   ちなみに、ここで着ている装束もすべて自作です。
   詳細は、「糸所」を御覧ください。・・・・っと
   ちゃっかり宣伝させてもらいました(笑)


ちなみに、蒔絵がまだなのでせめていろいろなを作りました